マルヒロ) 紘子さん、こんにちは!紘子さんの自己紹介をお願いします!
私は布などの素材を使ってインスタレーションやオブジェなどを制作し、展示発表しています。最近は短い文章を書いたりすることもあります。今までに本を3冊出版させていただきましたが、どれも作品と文章を組み合わせたものになっています。
マルヒロ) 紘子さんの作品を見てみたいです!
今年の春くらいまでは「HOMEMADE BLOUSES」(nidi gallery刊)という本の出版記念展を東京、金沢、西宮と続けて開催していました。なんでも気軽に簡単なものを自分で作ることができたら、とてもストレスがなく、平和に繋がっていくのではないかというのがテーマです。
ブラウスのレシピブックですが、レシピと言っても作り方が細かく載っているわけではなく、ブラウスが出来上がっていく様子をパラパラパ漫画のように収めています。出版記念展の時はブラウスの数分、11体のマネキンを作って展示しました。
私は日常の不満なことや違和感からアイデアを思いつくことが多いのですが、落し物ばかりしていた時は、どうしたら落し物をしないようにできるかと考えていました。
すべての持ち物に名前の札や鈴や紐がついていたらいいのではないかと思いついて、この透明人間みたいな「落としもの大将、ヘレンさん」が生まれました。
「ヘレン」という名前は私が英会話を習っていた時の英語名で、ヘレンさんは自分の分身のようなものです。ブローチやスカートの模様でさえも落ちないように紐がついています。
また、掃除が苦手で、本当に家が散らかっているのですが、その出来事をモチーフにしたこともあります。
埃やチリ、散らかった部屋もすべてピンクならば可愛いと思えるかもしれないと思ったことがきっかけです。これは「ハピネス」というタイトルにしました。
昨年は初めて連載にも挑戦しました。あるような、ないような架空の旅行記を書いて、それにつながるような作品を毎月制作して、AMB100貨というオンラインのセレクトショップのサイトに掲載していただいていました。
また、数年に1度ですが、セラミックアーティストのSatoko Sai + Tomoko Kuraharaの二人とweaというプロジェクトをしています。毎回テーマに沿って陶製の作品を作り、私のインスタレーションと共に展示販売します。
これは一昨年のものですが花器を制作しました。普段はあまり使えるものを作ることがないので、とても新鮮で毎回楽しいです。
マルヒロ) 「ふとんからの手紙」というものがすごく気になっているのですが、こちらはいったいどういったものなのでしょうか?始めたきっかけも教えて下さい。
毎月手紙と共に小さなおまけ的な作品がふとんさんという人から送られてくる、というプロジェクトです。
手紙は、嘘のような本当のような内容で、昨年の「魔法のふとん紀行」の連載に通じています。この連載が1年で終わってしまい、これを別の形で続けられないかと考えて生まれました。
同時期にアトリエを併設したスペースを構える計画がスタートしたので、その資金集めも兼ねて1年間の定期購読の読者を募りました。締め切りがないと作れないタイプなので、読者がいると思うと、なんとか毎月お送りできています。
マルヒロ) 紘子さんの作品には共通して浮遊感、儚さ、少女性、ノスタルジックのようなものを感じます。落書きした絵が紙から浮き出てきてどこかに飛んで行ってしまった…みたいな情景。または、シャボン玉のようにいつかパチンと消えてしまいそうな儚さを感じます。
紘子さんにとっての「原風景」とは何でしょう?また、日々の中でのインスピレーションの源も教えて下さい。
原風景って考えたことがなかったのですが、子供の頃の記憶が結構はっきりしていて、その思い出から雰囲気はできていると思います。
グリコやサンリオのおまけとか、砂場の中に少しだけ入っているガラスの粒とか、ふとんカバーの模様とか、当時好きだったものを今でもいいなと思っていて、そういうものを私も作りたいというのは常にあります。
インスピレーションについては、先ほども少し触れましたが、ネガティブな出来事から思いつくことが多いです。
ネガティブな出来事にどうにか打ち勝ちたいという一心で作りますが、視点を変えたら面白い出来事(人生のネタ)に変わることが楽しいです。
むしろネタが増えることで、強くなるような気がしています。たまにこんなにネタいらないよ!と思うこともありますけれど。
マルヒロ) 子どものころはどんなことに興味がありましたか?
また先ほどもちょっと触れましたが、小さいものや、キラキラしているもの、透明なもの、きれいな色のものが好きでした。音楽も好きだったと思います。
CMや映画の曲とか、当時はインターネットで調べるとかじゃないから、その音楽が偶然に聞けるとすごく嬉しかったのを覚えています。
映画の「サウンドオブミュージック」や「メリーポピンズ」は何度も見ました。でも、ピアノを習っていたのですが、レッスンも練習も面倒臭かった記憶があります。笑
マルヒロ) 以前、紘子さんのインスタライブで高校生の頃は「世界平和」を夢見て国連で働きたかったとお聞きしました。現在はアーティストとして活躍されていますが、アーティストになろうと思ったきっかけを教えて下さい。
「世界平和」は歳をとって、後から付いてきた願いなのですが、高校生の時は外国への興味がありました。
小学生の時に初めてアメリカに行ったのですが、その時の感覚が忘れられなかったんです。
自分の住んでいる場所に不満を持っていたわけではないですが、違う場所で違う言葉で違う感覚で過ごしている人がいる、というのがなんだか救いだったんです。これは今でもそういう気持ちがあります。
いろんな人がいるというのは、全く理解できない人もいるということで悩みでもあるけど、私は大きな世界のちっぽけなひとりだと感じることが好きなんです。
それで外国で働いてみたいというのがあって、世界のことなら、、というので単純に国連かっこいいなと思っていたんです。笑
インスタライブの時は高校生の時にニューヨークに行った時の話をしたんですね。美術館には行かなかったけど、当時憧れの国連には行ったよって話をしたら、その時に一緒におしゃべりしていたスールネの千春さんが、その頃から変わらないね!世界平和願ってるね、って。
ただ、高校が進学校で挫折をしました。笑 いくら勉強しても分からないし、毎日眠いんです。
その後大学にもし入れても、座学がメインだときっと眠ってしまいそうだし、テストの点数で比べられない世界に行きたいな…と美術大学の進学を考えました。でも、美大だって比べられる世界なんですけどね。
当時は雑誌の「オリーブ」が大好きで、こういう雑誌をデザインする人になりたいと思っていました。
グラフィックデザイン科を志望していましたが、テキスタイルデザイン科に入学することになり、今に至ります。
ただ、アーティストになりたいとは思っていませんでした。どこかの会社に入って、会社の中でデザインや制作ができたらいいと思っていました。
ですので、大学卒業後、1年留学したのですが、戻ってきてすぐに就職しました。
ただ、何かを自由に作りたいという思いはずっと残っていて、なんとなく30歳までに個展を開きたいと思いました。その時の仕事がとても忙しかったので、制作時間を取るために会社員を辞めました。
その個展から色んな方が繋いでくれたり、見つけてくれたりで、今まで作家活動ができています。
マルヒロ) インスタグラムのハッシュタグ「#お皿の上ららら」では、お皿もお皿の上に飾られているものも、紘子さんのセンスでとても心掴まれる食べ物?オブジェ?に生まれ変わっているように思います。ハッシュタグのネーミングも素敵ですね!
紘子さんはお皿を選ぶときどんなことを考えますか。また、どんなお皿が好きですか?また、紘子さん的「食器ロマン」を教えて下さい!
「#お皿の上ららら」の時はお皿に載せたいものが先にあることが多いので、それに合いそうなものを選びます。
洋服を選ぶみたいに合わせています。時々は、あのお皿使いたいなと思いついて、お皿に合いそうな料理を作ることもあります。
普段ご飯を食べる時は、よく使う食器(中華っぽい古い楕円のお皿、weaで作った小皿、イッタラのスープボウル、漆のお椀、引き出物でもらったガラスのコップ、稲穂柄の古いそば猪口、スターバックスのマグカップ、Satoko Sai + Tomoko Kuraharaのピンクのカップ)のラインナップでほとんど済ませてしまいます。どれもお気に入りです。
昔留学していたのがフィンランドだったので、その時に少しずつ集めた古いアラビアの陶器やガラスの食器も宝物です。
食器は日々の生活を助けてくれて、潤いを与えてくれる存在です。特に個展の前や仕事が重なった時など、買ってきたものや簡単な料理しか用意できなくても、食器が素敵だったらそれだけで嬉しい気持ちになります。ヘルパーさんみたいな感じです。
マルヒロ) April Shopが11月15日にオープンしましたね!April Shopについて詳しく教えて下さい。
April Shopは私のアトリエ兼小さなスペースです。
気軽に表現ができる場を作りたいとずっと考えていたものが実現しました。
カテゴリーは設けず、使う人によって変化する場所です。ギャラリーにも、お店にも、レストランにもなります。
やってみたいことがいくつかあるけれど、それはレンタルスペースをわざわざ借りてやるにはちょっと…という内容で、自分で場所を持てばそういうこともできそうだなと。
例えば、手作りカード屋さんがやりたいとか、透明の食べ物を出すレストランをやりたいとか、子供のお店やさんごっこみたいなことなんです。
そういうものが実際にできたら楽しいだろうなと思っています。
場所を始めるというより、大きなアートプロジェクトを、大好きな作家さんのお力を借りて挑戦してみるような感覚です。
東京にいらっしゃる時は是非、お立ち寄りください。