特集

第12回 「井戸端会議と結晶の秘密(後編)」

2022.12.23 (金)

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甘酸っぱい毎日を夢見てる、シェアハウスで暮らしてる、フリーランスフォトグラファーの初老男子、なにかと苦じょっぱくなりがちです。なまえはかおたんです。

先日引っ越しをしまして、7年近く住んだシェアハウスを離れて久しぶりの一人暮らしを始めました。

実家を出てからシェアハウスでの7年間も含め20年以上と長い年月を同じ地域に住み続けたこともあって、新しい地域への引越しは想像を遥かに超える大変さで心身ともにものすごく消耗しました。
慣れない地域での暮らし、新しい環境での仕事、容赦なく続く日常、慌ただしく過ぎて行く時間の中ですっかり浮き足だっていた僕は地に足のついた毎日を夢見てせっせと巣作りに励んだのでした。今回の引っ越しは僕に、足を地につけることの大切さを改めて教えてくれました。

苦じょっぱい 浮き足だった 毎日が

息をするように写真を撮りたい。そんな風に思うことがあります。
お仕事で撮影するときは、自分の感覚だけで撮影するわけではないので、写真の使用目的、クライアントさんや著者さん、編集者さんやデザイナーさんのご意見、ご希望をお聞きしながら自分がどんな風に表現したいのかを考えてシャッターを押します。撮影目的×その場の空気感÷今までの経験=作品。みたいな。撮影は基本的には現場でのアドリブの連続なのですが、自分の理想とする写真を求めながらも、現場にいるスタッフ全員が納得のいく作品に仕上がるように、しなやかに力強く形にできたら良いと思います。
息をする事は誰に教わった訳でも無いのに、誰でも当たり前にできています。写真を撮る事をそれと同じレベルでするにはどうしたら良いのか。それは日々理想の写真を思い浮かべながらシャッターを押し続ける事です。ああしたい、こうしたいと試行錯誤を繰り返しながらシャッターを押し続けていると、いつの間にか押せば写るようになるんです。息をするように、ただシャッターを押せば、撮りたいと思う写真が、写るんです。
色々な人の意見やたくさんの条件がある現場で、押せば写る、それを感じられる時、僕は地に足がついていると実感をします。それはめちゃくちゃ気持ちのいい事です。押せば写るに至る長く果てしない道を踏み締めてきた達成感なのかもしれません。

押せば写る、そんなシャッター。蹴ったら跳ねられる地面。いざ固めておかないと困ってしまう足場を堅実に育てる気持ちを大切に、波佐見焼のある暮らしの中に甘酸っぱい毎日を探してみたいと思います。もしかしたら、あなたの毎日も甘酸っぱくなるかもしれません。

第11回ではハサミ焼きの6つの工程の中から、型屋さんの作業風景を見学させていただき、型屋さんの先を見つめる視線の輝きという井戸端会議の結晶の秘密に迫りました。
今回は生地屋さんと窯元さん、商社さんの作業風景を見学させていただきます。これらの工程から井戸端会議の結晶の秘密に迫ってみようと思います。

まず訪れた生地屋さんには、前回伺った型屋さんで作られ使用型が積まれています。

第11回では波佐見焼を作るのには原型から使用型を作ることを知りました。生地屋さんではこの使用型をどの様に使うのでしょう。

この茶色い板は陶土屋さんから運ばれてきた陶石を砕いて作った粘土の板です。

この粘土の板を水と合わせてドロドロを作ります。これを泥漿と言います。

積み上げた使用型にはそれぞれ下から中を通って上に抜ける穴が開いていて、機械を通して圧力をかけた泥漿が流し込まれます。

流し込んだ泥漿はどうなったのでしょうか。使用型はこのように上下に外れるように作られています。

型を開けると泥漿は圧力をかけて流し込まれたことと石膏型に水分を吸われることによって綺麗にお皿の形になっています。お皿の左に見える粘土の柱は使用型を通った泥漿の柱です。お皿にも泥漿が使用型を通ったへそのおのような跡が見られます。

へそのおを削り取って刻印を押します。

はい、刻印かわいい。刻印される事でへその跡はあたかもなかったことに。
この一連の作業を圧力鋳込み成型法と言います。圧力をかけて使用型に土を鋳込んで生地を成形する方法です。
あなたのお家にあるやきものに刻印が付いていたら、もしかしたらこの成形法で造られたやきものなのかもしれません。

成形された生地はまだ柔らかいので、乾燥室で乾燥させて水分を抜きます。

十分に乾燥させた生地は濡れたスポンジで表面や渕を綺麗に吹き上げてなめらかに仕上げます。ここまでが生地屋さんのお仕事です。

作業場には乾燥させた生地がたくさん置かれています。使用型は成形を繰り返す度に摩耗していきます。消耗して古くなった使用型は新しいものに入れ替えられます。圧力鋳込み成形法ではこうして一度に大量の同じ形の生地を成形することができるのです。
次に訪れたのは窯元さんです。窯元さんにはその名の通り窯があります。

生地屋さんから運ばれた生地達は、一度窯で火入をして素焼きにされます。生地屋さんで見た時よりも色が濃くなっています。素焼きにすることで水分が飛び、強度が増して、この後の作業がやりやすくなります。

次の工程に行く前に丁寧に検品をして、不具合のあるものは弾かれていきます。

素焼きは表面がざらざらしていて、水を吸います。このままでは食器として使いにくいので施釉をして使いやすくします。釉薬を掛けることでいろいろな色を付けたり、耐水性を持たせることができます。

素焼きにした生地に釉薬を掛けていきます。

ムラにならないように施釉するには熟練した技が必要です。

ドボっと浸けて

バサッと振り切る。綺麗にできたら、ちょっと気持ちの良さそうな作業です。

釉薬に色をつけるには、釉薬にあらかじめ金属などの粉末を入れます。金属成分を含んだ釉薬は焼成方法によっていろいろな色は発色させます。

Season1を作り始めた当時、マルヒロ現社長の馬場さんは理想の商品を作るために、窯元さんと相談しながらいろいろな色の釉薬を試させてもらったそうです。その中には銅やクロムといった扱いが難しい釉薬も含まれていました。

窯元さんの長年の経験から、そもそも扱いの難しいことがわかっている釉薬まで試させてもらえたそうです。製品化まで辿り着いたと思われた釉薬ですら、生産を始め焼成を繰り返すうちに窯の中で次にやくものに悪さをする釉薬が見つかり泣く泣く商品化を諦めたものもありました。こいつは正に大迷惑です。そんな大迷惑なことでも快く引き受けて試行錯誤してもらえるのは、窯元さんの蓄積してきた技術と、日々培ってきた波佐見町の井戸端会議ネットワークの賜物です。涙涙の物語です。
本焼成を経て商品が完成した後は、商社であるマルヒロさんの倉庫に運び入れられます。

マルヒロオンラインストアで受注した商品は倉庫からピックアップされます。

ピックアップされた商品は出荷前にひとつひとつ丁寧に検品されます。木の棒で軽く叩いて検品すると、割れのない商品はチーンと澄んだ音が鳴ります。

検品された商品はものすごいスピードで梱包されていきます。迷いのない動作が美しいです。

緩衝材で包んだ商品はひとつひとつ手押しのブランドロゴがついた箱に詰められます。ハサミのマークがとってもキュートです。

このブランドマーク、窯元さんで釉薬を掛けるときに使われていたはさみですね。実際に使われているシーンを見た後だとロゴマークに対する愛着マシマシです。

キュートな箱に詰められた商品は丁寧に梱包されてお客様の手元まで配送されます。素敵な箱が届くと、開封する時waku wakuしますよね。開封の儀でなんだか特別な気分になります。

スープの冷めない距離で分業して作られる波佐見焼のやきもの。近いが過ぎて井戸端会議の舌の根も乾きません。分業するそれぞれの職人さん達が皆自分の仕事に揺るがない自信を持ち地に足のついた仕事をして、新しいものを拒まない探究心を持って接しているからこそ、どんどん新しくて楽しいものが生まれているのだと感じました。井戸端会議の結晶は新しいやきものであり、波佐見町の人々のつながりなのだと思いました。
そんな井戸端会議の結晶を集めて作った、Season1 のやきもの達は今もなおキラキラと輝く魅力に溢れているのです。クリスマスのプレゼントにジャストフィットです。
引越し疲れも少し癒えてきたので、新しい環境での仕事に生活に、キラキラ輝く結晶を見つけたいと思うかおたんなのでした。まずは新生活に向けてマルヒロさんから届いたかわいい箱を開封の儀からdoki doki と楽しませていただきます。

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