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第5回 「C.O.Iとはどんなものかしら」

2021.12.15 (水)

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甘酸っぱい毎日を夢見てる、シェアハウスで暮らしてる、フリーランスフォトグラファーの初老男子、なにかと苦じょっぱくなりがちです。なまえはかおたんです。

僕には季節の変わり目に感じる匂いがあります。あ、冬の匂いがした。季節の匂いです。
空気の匂いなのか、なんなのか自分にもよくわかりません。
季節の匂いを感じると新しい何かが始まるような、そんなとても前向きなワクワクとした気持ちが湧き上がります。毎朝こんな前向きな気持ちになる匂いに包まれたいのですが、残念ながらこれを感じるのは季節が変わった初めの日だけのようです。匂いに慣れてしまうのでしょうか。季節の変わり目にしか感じることのできない匂いとそれがもたらす高揚感、儚く刹那な瞬間に甘酸っぱさを見出します。そんな刹那の瞬間も楽しむ気持ちから、波佐見焼のある暮らしの中に甘酸っぱい毎日を探してみたいと思います。もしかしたら、あなたの毎日も甘酸っぱくなるかも知れません。

僕はオペラが好きです。中学生の時にテレビでやっていたオペラ「フィガロの結婚」を初めて観たときに衝撃が走りました。大袈裟でかっこいい衣装に身を包んだ歌い手が、とても意味ありげなセットの舞台の上で演技をしながらなんだかものすごい歌を歌う。会話も歌いながらする。しかも内容は酒池肉林の色恋沙汰。トキメかずにいられようか。
なんだか様子のおかしい魅力的な登場人物がたくさん出てきますが、僕のお気に入りはケルビーノという少年の役でした。彼には恋人がいるのですが、別の女性に猛烈に恋焦がれています。それにとどまらず劇中に登場する全女性にちょっかいを出します。多感な思春期真っ只中なのです。そんな彼が劇中に歌う曲が「自分で自分がわからない」と「恋とはどんなものかしら」です。全ての女性に恋をしてしまう、愛とか喜びとかそんな言葉を考えるだけで心がすぐに燃え上がり、かと思えば凍りつく、初めて覚えた欲望に満ちた恋心を歌っています。エモいです。この少年の役は女性が演じます。オペラの世界では女性が男性を演じる役をズボン役というそうです。多様性を大事にする昨今、映画やドラマの世界では同性愛者の役は実際に同性愛者の役者が演じるべきだなんて話もあるようです。そんなナウな話からのズボン役とか、もうその呼び方からして炎上要素しかないように思えますが、僕はこの思春期の少年の役を女性が演じる事にとても魅力を感じました。自分でもなんだかよくわからないものの狭間で悶え苦しむ少年の様を男装した女性が演じることに独特な甘酸っぱさを覚えます。
思春期まっさかりの中学生の頃の「自分で自分がわからない」かった僕は、ビデオに録画したフィガロの結婚を何度も繰り返し観ながら「恋とはどんなものかしら」と全登場人物に感情移入しては老若男女の恋模様を甘酸っぱく時に苦じょっぱく楽しんでいたのでした。

そんな思春期から早うん十年。僕もすっかり初老男子になったのですが、いまだに恋とはどんなものかしら状態です。
自分で自分がわかったのかというと、昔よりはちょっとはわかったような、やっぱりわからないような。
これって永遠のテーマなのかしらなんて考えていたらとっても甘酸っぱい気持ちになってきました。

恋とはね いったいどんな ものかしら

恋ばなのお花畑はいつだって満開、永遠のテーマについて語り合う準備はI’m readyです。
それでは、Are you ready? コイの話をHere we goしましょう。

今日語り合うのはコイはコイでも、マルヒロさんのC.O.Iの話です。

永遠のテーマを紐解いていきましょう。

鮮やかな黄色がとても元気に印象的なこちらはCの箱です。ひまわりっぽいこの黄色とても好きです。

箱を開けると半円状のやきものが収まっています。箱は蓋だけでなく受け皿の方も黄色いです。見せる収納とかしちゃいたくなるキレイな箱です。

中身を取り出すとCが現れました。Cは指で弾くとチンとなる磁器のやきものです。Cザラメというこのやきもののためにブレンドした、磁土に荒い石の粒子を混ぜた土を使っているそうです。白地に石の雑味がいい感じに風合いを持たせています。

以前はなんだか年寄りくさい色だなぁと思っていたのですが僕がここ数年急に好きになった色、えんじ色です。なんかぁ、すっごくぅ、大人の色って感じぃ。です。

うっかりプロポーズしそうになる感じの大きさの箱ですが、開けるとそこには指輪ではなく小さな穴の空いた円柱が入っています。この小さな穴には薬指は入らないかも知れません。

中身を取り出すとOが現れました。指で弾くととても軽い音がします。これはやきものではなく石膏でできた円柱です。波佐見焼のほとんどは石膏を削って作った原型から作られます。原型から量産するための使用型を作り、使用型を使って生地を作り、生地を素焼きにして、下絵付けして、釉薬掛けして、本窯で焼いて、上絵付けしてとそれぞれ作業ごとに分業して作られていきます。このOはいつもは波佐見焼を作る作業工程で使われる石膏の原型を商品に転用したものです。

Yeahめっちゃ雅。とってもシックで雅な紫の箱です。

箱を開けると○△□のマークの入った板が入っています。最近見た韓国ドラマを彷彿とさせるマークです。

イカしたデザインの板です。完全にIです。こちらもCと同じCザラメを使ったやきものです。もともとIはCの生ハマでした。イニシャルトークなんのこっちゃです。生ハマというのは生地を窯に入れて焼成するときに、窯に生地がくっついてしまわないように下に敷く台のことです。生地は焼成すると収縮するので生ハマは生地と同じ収縮率のものを使わなねばなりません。また基本的に焼き締まり縮んでしまった生ハマは使い捨てられます。Cを焼成するときに窯にくっついてしまわないように下敷きにする台がIということです。しかしIは使い捨てられることなくCと共に日の目を見ることになりました。よかったね、I。

箱から出したC.O.Iを実際に使ってみました。C.O.Iとは簡素で飾らない美しさを表現した、香りを楽しむためのアイテムで、お香立て、アロマストーン、香木置きとしてお使いいただけるそうです。Iに刻まれた○△□が単純な形状なのに飽きさせない楽しさを感じさせます。

Oは石膏でできているのでオイルを垂らして香りを楽しむアロマストーンになります。石膏って見ていると吸い込まれそうな気分になるの僕だけでしょうか。多孔質なテクスチャがとってもナイスです。

Oの小さな穴はお香を立てるための穴でした。決して指は立ててはいけないのです。Cはお香の受け皿にもなるし、Oと一緒に立てて使えば風よけにもなるそうです。まるでパズルのようです。お香が燃え尽きる前に新たな組み合わせを編み出したくなります。

C.O.Iとはどんなものなのか、永遠のテーマは紐解けない。なぜなら永遠だから。そんな意味深ぽい中身空っぽなことを考えている内に、お香は燃え尽き、お部屋にはとってもいい香りが立ち込め、同居人にいい匂いだねと声をかけられました。
燃え尽きて姿を消しても、残り香で人をいい気分にさせる。そんなC.O.Iならしてもいいかも。妄想に現を抜かすかおたんなのでした。

追伸
この文章を書き終えた後にマルヒロさんから教わったとっても甘酸っぱい情報があります。
C.O.Iはコイとは読まずに、シーオーアイと読むそうです。
次回の甘酸っぱい毎日希望をお楽しみに。

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