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第3回 「夏の思い出と硝子の水面」

2021.08.11 (水)

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甘酸っぱい毎日を夢見てる、シェアハウスで暮らしてる、フリーランスフォトグラファーの初老男子、なにかと苦じょっぱくなりがちです。なまえはかおたんです。
すっかり夏本番です。四季それぞれにたくさん思い出はあるけれど、夏の思い出はどれも色濃く、なんだかとっても特別な気がします。子供の頃の記憶は大人になるにつれてなかなか思い出すことがなくなってしまいましたが、夏休みに家族や友達と普段の生活とは違う、その夏にしかない何かを楽しんでいた、そんな記憶の欠片が心の奥底で甘酸っぱさを醸し出しているに違いありません。
そんな記憶の欠片探しから、波佐見焼のある暮らしの中に甘酸っぱい毎日を探してみたいと思います。もしかしたら、あなたの毎日も甘酸っぱくなるかも知れません。

夏になるとしていたこと。小学生の頃は家族と一緒に新潟にある祖父祖母の家に泊まりに行っていたことを思い出します。祖母の作ってくれる料理がとても好きで、キッチンにはいつもいい香りが立ち込めていました。中でも新潟の郷土料理ののっぺは忘れられない味です。のっぺは芋や豆の入ったぬるぬるした煮物です。これに入っている押し潰して乾かした豆が最高にうまいんです。
祖父はとても面白い人でいつも優しく、時には厳しくたくさんの事を教えてくれました。ある日北半球と南半球では季節が逆になるということを祖父から教わると、僕は暑い夏には季節が逆の国から冷たい空気を持ってくればいいじゃないかと思い付きました。すると祖父は世の中便利過ぎると人間は怠け者になってしまから夏は暑くていいんだよと言っていました。なんだかよくわからないけど、妙に納得してしまいました。くだらない会話にもちゃんと自分の考えで話をしてくれる素敵な祖父でした。
初老になった僕は猛暑のカンカンな夏日でも、冷房でキンキンに冷えた部屋で毎日を便利に過ごしています。おじいちゃん、怠惰な僕を許してください。

夏の思い出、思い出そうとすると結構あれこれ思い出すものです。思い出に浸っていたらなんだかすっかり甘酸っぱい気持ちになりました。昔があっての今ですから、たまには立ち止まって昔のことを思い出すのも良いものです。昔のことを考えることで、今の自分がなぜここにいるのかを意識できる気がしました。思い出最高です。もっと夏したいです。

自宅でも夏ができる最高のアレ、しちゃいます。
スイカです。
名実ともに夏の代名詞、スイカです。
緑に黒のギザギザ模様の皮。割れば赤い実に黒い種。実から皮までの赤白緑の完璧なグラデーション。まごうことなき夏の化身。
こいつを食すだけで、夏できちゃいます。

小玉のね スイカを割って 夏します

スイカってひと玉買うとデカくて一人で食べるにはちょっとハードル高いなと思っていたのですが、最近は小玉スイカなるものもあるんですね。僕が知らないだけで昔からあったかもですが。
これなら一人でもすぐに食べ切れそうです。
ギザギザ模様のない皮の黒いスイカや、種ごと実を食べられる品種などあまり知らないスイカが色々あるものだなぁと感心しつつ、今回は僕的夏まっしぐらなルックスの緑に黒のギザギザ模様、赤い実にしっかり黒い種の入った小玉スイカをチョイスしました。
器はかわいい動物たちがあしらわれている色絵 菊型鉢 中と小を用意しました。

どれもかわいい絵が描かれているので、一枚ずつよく見てみようと思います。
一枚目は猫ちゃんです。エキゾチックショートヘアという猫の絵が描いてあります。ちょっと太々しいお顔がなんともかわいらしいです。僕は猫アレルギーですが、猫ちゃん大好きです。猫のいる友達のお家では、アレルギーの薬を服用してお邪魔して、具合が悪くなる直前まで遊ばせてもらいます。歳のせいか、最近昔より具合が悪くならなくなってきました。いつかアレルギーの心配をせずに一緒に遊べる日が来たらいいなと思います。
指で弾くとチンと鳴る白地の磁器にカラフルな絵の付いたこのやきものは、大量生産するための技術である上絵転写を使って作られます。職人さんたちは手書きの絵柄をいかにプリントで量産するのかにこだわり、熱心に作られているそうです。
このプリント、よく見ると黒い線や赤い線その上や下に透明な色が付いて出来ています。
色や柄ごとに版が分かれていて、約10枚の版を合わせてこの一枚の絵を作るそうです。
各版がずれないように慎重に機械にセットして一枚のシートを作り、シートは職人さんの手作業で空気が入らないように正確な位置に貼られます。 
量産品と聞くと人の手を使わずに機械で簡単に作られた物のように聞こえてしまっていましたが、全くそんな事はなく、これは紛れもなく職人さんたちの手作業で作られた情熱とこだわりの結晶なのだと再認識しました。

二枚目はハリネズミくんです。ピグミーヘッジホッグと葡萄の絵が描いてあります。ハリネズミ可愛いですね。その可愛さはずるいとすら感じます。あんな愛くるしい存在に僕もなりたいです。多彩な色使いで描かれた葡萄はとても芳醇さを感じさせます。葉っぱは緑、葡萄は紫、みたいな固定概念に囚われない色使いなのに、ものすごくTHE 葡萄な存在感です。素敵です。

三枚目はパグちゃんです。はしゃぐパグと紅葉の葉が描かれています。猫ちゃんも好きですが、僕は犬派です。いつかワンちゃんと暮らしたいです。猫、ハリネズミ、犬、同じ動物なのになんでこんなに違う特徴を持っているんだろう。やきものの絵を見ているだでうっかり地球の神秘に一歩踏み入れてしまいます。多動気味な僕はよそ見が大好きです。
こちらの絵も当然の如く固定概念には縛られず、紅葉の葉は水色とベージュです。パグちゃんの躍動感と舞い散る落ち葉がとても軽快で、パグちゃんとのお散歩へマインドトリップしてしまいます。

四枚目は鳥さんです。アマゾン川に生息するコンゴウインコと松竹梅の絵柄です。大胆な組み合わせです。鳥ファンの方に聞いたことがあったのですが、インコやオウムは長生きするので自分の歳を考えて飼わないといけないとおっしゃっていました。小さいインコでも飼育下で長いと20年、大きなオウムになると4,50年生きるそうです。初老の僕にはオウムをお迎えするのはちょっと難しいかもしれません。
松竹梅は縁起がいいものとして知ってはいましたが、なんで縁起がいいのかが知りたくなって調べてみました。松は常緑樹で冬でも枯れないことから長寿延年の象徴とされ、竹は折れにくく成長が早いことから生命力と成長の象徴とされ、梅は苔が生えるほどの樹齢になっても早春いち早く花を咲かせることから長寿の象徴とされたそうです。ざっくり長寿で縁起がいいってことです。長寿のインコと松竹梅、大胆なだけでなく、なんとも豪華な長寿の組み合わせです。

最後に五枚目はウーパールーパーくんです。僕の一推し柄です。このやきものは1690年ごろの有田の色絵がモチーフになっています。白い磁器に透明の石灰釉で施釉してあるのですが、釉薬に若干青みを持たせて、現代風にアレンジしてます。また上絵転写に使われている和絵具はガラス質を多く含む絵具で、焼成することにより透明感のある色が表現できます。それらの技法と澄んだ水の中を泳ぐウーパールーパー、キラキラと輝く水草の絵柄が完全にマリアージュしちゃってます。なんてみずみずしいやきのもなんでしょう。ただでさえジューシーなスイカがますますジューシーに感じられます。みずみずしさに溺れてしまいそう。

絵柄を楽しく観察しながらスイカを食べていたら、あっという間に半玉食べてしまいました。
今日は一人で食べてしまいましたが、残りの半玉はシェアハウスの同居人と一緒に、今日気が付いてしまった何故このやきものがかわいいのかを解説しながら食べようかと思います。
初めは白に見えていたのに、今ではすっかり青味が感じられてすっきり爽やか菊型鉢です。
思い出探しから今の自分を認識し、なんでもない毎日を少し大事に暮らしてみようかなと思うかおたんなのでした。

これまでの「かおたんの波佐見焼と僕の甘酸っぱい毎日希望。」はこちらからご覧いただけます!

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