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【連載】ものの出発点「土偶作家、三浦宏基」

2020.08.11 (火)

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佐賀県武雄市の静かな山の中で作陶されている三浦宏基(みうらひろき)さんは、今年の6月に独立したばかりの土偶作家である。

6月には福岡のギャラリー・二本木にて展示会を行い、三浦さんの作品を求めて県内外から多くの人が展示会に訪れた。

三浦さんの土偶は動物や人をモチーフにしたものがメインで、三浦さんのイメージと手によって生み出される土偶たちはどれもなんとも言えない表情をしている。ずっと見つめていると愛くるしくなってくる。

土偶のもとになる土や砂は、工房からすぐの裏山から取っていたり、川から採取していたりと、身近にある自然のものを使っているらしい。

「野焼き」という原始的な方法を用いて、土偶制作をしている三浦さん。もみ殻・藁・木を主な燃料として、24〜30時間ほどかけてゆっくりと焼いていくそう。

もみ殻は知り合いの農家さんから譲ってもらうそうで、土や燃料すべて自分の周りにあるものを使って制作している。

山の土、川の砂を混ぜた粘土に、三浦さんというフィルターを通して、動物や人の形が与えられ、野焼きで焼成される。

年を重ねると知識や理論にがんじがらめになってしまうけれど、三浦さんの表現はどこまでも自由で、純粋だ。

混じりけのない心で土に向き合おうとしているのだと思った。

土偶以外にも壺なども制作している。土器の壺だと中に入れた水が夏場でも冷えた状態で保てるそうだ。そのため現在、プラスチック製のものから土器の壺へと人々の関心が向き始めていると話してくれた。

また、土器の壺なら例え割れたとしても、破片を砕いてまた土に混ぜれば再利用することができるので、循環して土を利用することができることも教えてくれた。

三浦さんの工房の中や外にはたくさんの土偶が置かれている。「あっ、ここにもいた」「こんなところにもいたのね」と、土偶を見つけることが楽しくなってくる。

三浦さんの土偶たちはきっとこれからいろんな方の暮らしの中に溶け込んでいくのだろう。今後の活躍がとても楽しみな作家さんの一人だ。


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