メルカリ相樂さんとの出会い
捨てるのにはもったいないけど自分ではもう使わなくなったものをどうしようかと考えたときに
「そうだ!メルカリに出品しよう」
と考える人も多いのではないでしょうか。
日々焼き物を生産しているマルヒロにも、
生産工程において現状規格ではB級と判定され商品化されない物や、
製造工程での産廃物とされる様な端材資源など、
通常では売ることができないけど捨てるのにはもったいないものがたくさんあります。
それらに新しい価値を与えて誰かの大切なものにならないか。
ちょうどそんなことを考えていた時、同じように考えを巡らせているメルカリで働く相楽さんに出会いました。
相樂さんは、メルカリのブランディングを担当しており、プロジェクトの一つとして「循環型社会の実現」のもと、メルカリの新しいアプローチの方法を模索されていました。
このように限りある資源を効率的に利用するとともに、再生産を行って
持続可能な形で循環させながら利用していく社会のことを“循環型社会”といいます。
この“循環型社会”の実現は今、色々な業種で課された大きな課題の一つともいえるのではないでしょうか。
さらに話を聞くうちにメルカリは「捨てるにかわる選択肢を作り出す」というアクションをとても広い視野で考え実行していることを知りました。
例えば、こんなお話も。
『メルカリでは、色や形が不揃いのため市場に出せず(しかし品質には影響のない)廃棄されてしまっていた
野菜や果物などを農家さんが直接アプリ内で日々販売しています。
市場基準では「価値がない」と判断されたものたちが、メルカリを通して必要とする人と出会い価値を取り戻しています。』
生産者の方なら業種問わずだれでも一度は、
「目の前にあるたくさんのB品や産廃物を捨てずに生かすことはできないか。」
と思ったことがあるのではないでしょうか?
けれど、それを現実的にビジネスとして成り立たせることを考えるとなかなか一歩が踏み出せないものです。
そんな時、農家さんのメルカリの活用は需要と供給が合致したとても画期的な取り組みに思えました。
企業規模で「捨てるをなくす」のアクションができれば、循環型社会に向けてきっと大きな一歩になるはずです。
焼き物の生産過程で出る廃材やB品を所持しているマルヒロと
それらを使って新しい価値を生み出したいメルカリ。
そんな2社でいったいどのようなアクションが起こせるのでしょうか。
クリエイティブな発想で”B級品”を特別な価値をもつものに
少しでも多くの人の認識を変える。
他人ごとではなく自分のこととして考えるために、
手軽にできて誰もが楽しめるワークショップ形式でできることを考えました。
まずはその新しいプロジェクトに対してメルカリの社員の方々に興味をもってもらうため
社員の皆さんが普段会社で使用するためのマイマグを好きなようにカスタマイズして自分だけのオリジナルマグを作ろうということに。
普段メルカリのオフィスではペットボトルや缶の飲み物を飲んでおり、
東京オフィスから1日に出るペットボトル、ビン、缶、紙パックのゴミの合計はなんと約3590個!
使い捨て容器の数は約2608個!
ひとりひとりがマイマグを持参すれば多くのゴミを減らせることになります。
ワークショップで使用するのはマルヒロの代表作でもあるブロックマグのB品です。
使用上問題がなくても検品基準にひっかかってしまい、価値が下がってしまったB品に焼き物用のシールを自由に貼ってもらって自分だけのオリジナルのマグカップを作っていただきました。
いざメルカリへ!
2019年10月23日私達は、メルカリ社員向けのワークショップを開催するため、六本木ヒルズ森タワーにあるメルカリの本社へ。

様々なセキュリティー、未来的なシステムを通過して
私達が普段暮らしている波佐見町での長閑な田舎暮らしとのギャップに戸惑いながらもオフィスへ到着。
社員の方々は国際色豊かで和気あいあいとしており個性的で素敵な顔ぶれでした。
メルカリとマルヒロのそれぞれの会社の取り組みや、今回のワークショップに至った経緯などを両社でプレゼンし合い
お互いの会社をまず理解することに。

循環型社会の実現に向けた取り組みを社員全員が楽しみながら積極的に参加している姿勢がとても印象的でした。


そしてワークショップへ
今回は波佐見焼の産地でよく使われている※1上絵転写という技法を使ったワークショップを行いました。


まず、マグカップに貼る転写シートという柄がプリントされたシートの中から好きなデザインを選びます。
今回のワークショップのために相楽さんがデザインされた
メルカリオリジナルの転写シートや、マルヒロで使用されなくなった転写シートを再利用し、組み合わせることで
オリジナルの柄の組み合わせが無限にできていきます。


転写シートからお気に入りの柄を切り取り

切り取った転写シートを水につけることで柄が台紙から剥がれ、マグカップに貼ることができます。

好きな位置に柄を配置していきます。

皆さんおもいおもいにオリジナルマグカップづくりに熱中していました。





最後に記念撮影

このワークショップで作ったマグカップは後日マルヒロに送り返し
窯元さんで焼いて完成します。

完成したマグカップ
マグカップはメルカリのみなさまがオフィスで大切に使ってくださっています!
今回のワークショップがとても好評であったこともあり
先日メルカリでは一般のお客さまを対象とした親子ワークショップが開催されました。
このワークショップではマルヒロのB品のそばちょことプレートに親子で転写シートを貼っていただきました。
そしてクリスマスイブの12月24日に完成した商品のプレゼントが届くという嬉しい企画。
参加された皆さん!マルヒロのサンタが準備中ですので楽しみにしていてくださいね

ワークショップの様子はこちらで詳しくご覧いただけます↓
焼き物の産地“波佐見町“が抱える廃材について
マルヒロが焼き物を生産している長崎県の波佐見町では
ワークショップで使用されたB品以外にも多くの廃材の問題を抱えています。
いったいどのようなものがあるのか
普段何気なく使っている日常食器の裏側を少しご紹介します。
匣鉢(ぼし)
焼成時に降り注ぐ灰がかかるのを防いだり、積み上げて窯に入れることで効率良くたくさんの陶器を焼くための容器。
他の産地ではさやと呼ばれることもある。
今では匣鉢を使用しない焼き方を主流としている窯が増えているためたくさん廃棄されている。
匣鉢は水はけがよく、植木鉢に適している。



はま
焼き物を焼成する際に焼き物の下に敷く道具のこと。
歪み防止や流れやすい釉薬をかけた際に棚板を傷つけないようにする効果もある。焼くとハマも縮んでしまうため、使い捨て。
波佐見町の道端にはハマが落ちていることがあるため身近な存在。

陶片、B品やワレ
販売出来ないB品やB品以下の商品は通常廃棄される。
(販売できるB品はマルヒロの陶器市で値段を下げて販売される。)
マルヒロ1社で年間20297個のB品が出る。

そばちょこのB品(年間1万~2万個)
上絵付けやプリントをされる前の太白(白い)状態でB品になってしまったそばちょこが年間1万から2万個出ており、その処分に困っている。

石膏型
焼き物を量産するために使われる型
摩耗して使用できなくなったものや廃番品は廃棄される

廃番になって眠っている生地

焼き物そのもの以外に、その作られる過程でもたくさんの廃材がでることがわかります。
“ぼし”や“はま”なんてことばは聞いたこともない方は多いのではないでしょうか。
工業製品ならではの無機質な理路整然とした佇まいはなんだかオブジェのようにも思えて
これって何かに使えないのかなーといつも思ってしまいます。
また、廃棄すること自体も簡単ではなくなってきている現状があります。
例えば石膏型は近年廃棄されることに規制がかかっておりこのままだと溜まっていく一方になってしまいます。
廃材やB品のセカンドステージの可能性
最後にマルヒロが取り組んだ過去の実績を少しご紹介します。
廃材と聞くとゴミのように思えてしまいますが、アイデアによっては素晴らしい輝きを放つこともあります。
マルヒロ直営店
マルヒロの直営店の床は、建築家の関祐介さんのアイデアで、素焼きの状態で不良があった器や廃番になり商品として流通できない器約2万5000点にモルタルを詰め作られています。


麺散
原宿にあるうどん店、麺散さんの店舗の外壁は波佐見焼の陶片が使われています。
麺散さんより依頼を受け陶片を提供しました。

何らかの事情で売ることができなくなってしまった食器がクリエイティブな発想により、建築資材やインテリアとして生まれ変わったこれらプロジェクトは、海外を含め様々な方面から興味をもっていただいております。
昨今、世界では環境問題に対して早急な対応が求められています。
ストローをはじめとしたプラスチック製品の廃止など
今まで当たり前に使ってきたものが使えなくなる日常が
こんなにも早くやってくるなんて少し前には想像できませんでした。
もしかしたら焼き物を作れなくなる日は思ったよりも早くやって来てしまうかもしれません。
近代化された生活に慣れてしまった今、
全く環境に影響のない生活を送ることは不可能ですが
ものを作る立場として生産される背景や、必要とされる量についてしっかりと理解し、それを踏まえて新しいものを生み出し、発信していきたいと思います。